第四章:ND-20 自分の未来に対する信頼感

偽できない理論

これはチェンジ理論の記事です

より番号が若い記事の続きとなります。分からない方はこちらをお読み下さい。

偽できない理論(ND)目次

2019年1月2日

第四章:ND-19 マイナスがあるから人生は楽しい

2019年1月21日

140.無駄な時間かどうかは自分で決める

少し想像してみて欲しい。生まれてこれまで何回ぐらい、偽できないを使ったのだろうか。その回数を測れる機械があるとしよう。数字の膨大さに驚くかもしれない。だとしたら、それは偽できないの恐ろしさを知ったからだ。理屈を知らなければ、何も感じることはないだろう。これまで恐れていたものが恐れるに足りず、反対に、常識的なものの考え方がいかに恐ろしいのか、いくらか理解できたはずだ。その上でこれからどう生きるか。それは自分で決めればよい。機械に表示された数字は、貴重な人生を無駄遣いした回数でもある。生産的で幸せな人生を送るには、確かに必要のない時間だ。ただし、偽できないで課題から逃げた日々も、決して無駄ではない。その時間を有益な失敗にできるかどうか。それは当人次第と言えるだろう。

141.失敗を恐れるほど失敗しやすくなる

偽できない理論の内容は、目新しいものではない。例えば、日本の武士道の考え方がそれに近い。武士道とは死ぬことと見つけたり。この言葉は死を推奨するものとは違う。勝負ごとでパフォーマンスを最大化するための知恵なのだ。これまで説明した通り、心身の緊張が度を超える場合、パフォーマンスは下がる。動きや反応が鈍くなり、判断ミスによって失敗が増えるはずだ。生死が分かれるような局面なら、なおさら心身は強ばるだろう。失敗を恐れるほどに、失敗する可能性が高まってしまう。格闘技で戦意を喪失した選手と同様、恐怖から目を背けた側が負けるのだ。このパラドクスを克服するには、結果を受け入れておく必要がある。それが死を覚悟しておくということだ。失敗の結果を受け入れた上で挑戦し、どんな結果でも最善として受け入れる。この心境で勝負ごとに臨めば、パフォーマンスは最大化できる。当時の武士が、このパラドクスを論理的に解釈していたとは考えづらい。しかし、私たちはそれを理解しているし、練習次第で練度はいくらでも上がる。死ぬ覚悟はできなくても、プレゼンで失敗するぐらいの覚悟なら、簡単にできるはずだ。

142.三つの軸でメンタルヘルスを評価する

チェンジ理論の目的は、メンタルヘルスを平準化することにある。それを実現するには、精神的な健康や不健康を測定しなくてはならない。メンタルヘルスの評価する軸は三つ。偽できない理論は一つ目の評価軸、FT軸を説明するための理論である。FT軸を構成しているのは恐怖心と信頼感という二つの相反する要素だ。では、その度合いをどのような視点から測るか。測定要素について説明する。より不健康な状態である恐怖心の側面から、FT軸の全体像を確認しよう。FT軸の度合いはわ以下、三つの測定要素の強さから判断する。他人に対する支配性、結果に対する期待値、基本的恐怖心の強度である。

143.”受け入れられない”も偽できない

まずは他人に対する支配性から見ていこう。他人というのは、外的要因の代表例である。支配性とは、思い通りに動かしたいという意思だ。つまり、外的要因を操作したいという願望が強いこと。それが、他人に対する支配性という言葉の意味である。他人の感情、解釈、価値観を思い通りに操作するのは不可能だ。しかし、たいていの人はそのことを受け入れられない。そのため、叶わない願望が言葉や態度にはみ出してしまう。もちろん、他人以外の外的要因、過去や環境についても同様だ。どんなに理不尽でも、動かしようのないことはいくらでもある。それを受け入れられない、のではない。受け入れたくない、だけである。躍起になって外的要因を操作したがるなら、要素の値は低い。仕方なくコントロールを諦めているなら、要素値は中程度だろう。外的要因は自分の課題ではないと明確に割り切れているなら、値は高くなる。外的要因を操作したい意思や願望がどのぐらい強いのか。それが他人に対する支配性である。

144.失敗やミスを嘆く時間さえ惜しい

次に結果に対する期待値について見ていこう。結果というのは中間要因のものごとだ。期待値とは、それを上回れば満足、下回れば不満というボーダーラインを指す。つまり、ものごとに対する満足のハードルが高いか低いか。それが結果に対する期待値という言葉の意味である。結果は予測不可能な外的要因の影響を受ける。期待が裏切られるのは当たり前だ。それを有益な失敗にしている限り、何も問題はない。次のアウトプットに還元できないのは、DNSが強いから、である。自分で主導権を握っていれば、期待値を下げざるを得ない。失敗やミスを嘆く時間さえ惜しいと感じるだろう。結果に対する不満を感情的に表現するようなら、要素の値は低い。しぶしぶ結果を受け入れている程度なら要素値は中程度だろう。情報を次の挑戦に活かすことに集中できているなら、値は高くなる。結果に対する満足と不満のハードルがどの程度なのか、それが結果に対する期待値である。

145.精神的な痛みは慣れれば軽くなる

最後に、基本的恐怖心の強度について確認しよう。基本的恐怖心とは他人の目や評価に対する恐怖心だ。具体的に嫌われる、見下される、軽視される恐怖心である。基本的恐怖心がまったくないという人はいない。重要のは向き合えているかどうかだ。目を背けた途端、基本的恐怖心は大きくなる。しかし目を向けている限り、大きくなることはない。つまり、自覚している限り、恐怖心に飲まれることはないのだ。それにも関わらず、なぜ恐怖心から目を逸らしてしまうのだろうか。それが精神的な痛みをもたらすからだ。具体的には、孤独感、劣等感、無力感である。これらは身体的な傷と同様、痛みを感じさせる。慣れていなければ、受け流すのは簡単ではない。しかし、これらマイナスの感情を埋める過程にこそ成長や楽しさがある。それには孤独感、劣等感、無力感があることを認めなくては始まらない。基本的恐怖心から逃げ回っているなら要素の値は低い。それらを打ち負かそうと焦っているなら、要素値は中程度だろう。それらを開示し、克服する過程を楽しめているなら、値は高くなる。嫌われる、見下される、軽視される。他人の評価をどのぐらい恐れているか。それが基本的恐怖心の強度である。

146.三つの測定要素で見落としを防ぐ

他人に対する支配性、結果に対する期待値、基本的恐怖心、これらがFT軸の測定要素だ。一つのものを三つの窓から眺めているに過ぎない。当然、それぞれの値は相関する。例えば、他人を支配したがっている人は、その結果に高い期待を寄せているはずだ。他人を恫喝しておきながら、結果を受け容れられていることなどありえない。複数の視点から確認するのは、見落としのリスクを下げるためだ。言葉の意味や振る舞いそのものは簡単に偽装できる。例えば、恐れている人ほど虚勢を張り、強がって見せるだろう。言葉や振る舞いは、真意と反対のものになることが多い。例えば、あなたの人生だから自分で決めなさいと言った直後、深いため息をつくのはどうだろうか。人は自然に嘘をつく。それにもっとも騙され翻弄されているのは本人である。アクティベーターは自覚のない嘘を見抜けなくてはならない。軸を評価する視点を分散させているのは、判断のミスを防ぐためだ。

147.恐怖心がないことが信頼感につながる

以上か、恐怖心の側から見たFT軸である。では今度は、信頼感の側から見てみよう。一般的な他人に対する信頼感というのと少しニュアンスが異なるはずだ。チェンジ理論における信頼感は恐怖心と真逆の傾向を意味する。つまり、他人に対する支配性、結果に対する期待値、三つの恐怖心が低い状態を、信頼感と表現する。簡単にポイントを抑えておこう。他人をもの扱いせず、意思を持つ不可侵の存在として認めていること。過去や環境がどうあれ、自分がやるべきことに集中できていること。最悪の結果を覚悟した上で行動し、どんな結果でも次の挑戦に活用できること。基本的恐怖心があることを恥じたりせず、劣等感や無力感とうまく付き合えること。これらが信頼感のニュアンスである。

148.自分の未来を信頼できているか?

恐怖心を下げれば、必然的に信頼感は上がる。そうすれば、どんなことが起きても、すべて有益な失敗であるという確信が生じるはずだ。いかに最悪で悲観的な状況でも、それを克服する勇気が挫かれることはないだろう。その感覚は未来に対する信頼感と言い換えても良い。恐怖心と信頼感、どちら寄りの状態がを判断するのは、それほど難しくないはずだ。まずはそれら二極を区別する練習から始め、少しずつ目盛りを細かくしていけばよい。最終的には、三つある評価軸をそれぞれ五段階で見極められるようになって欲しい。それが平準化の第一段階だ。

149.課題に対する相対的な値を判断する

FT軸が信頼感に寄っている人はおそらく少数派だろう。たいていの人は、恐怖心が強い状態で他人や結果に怯えながら生きているはずだ。ハードルが高すぎると感じただろうか。だとしたたらそれは、指導する相手を見下している。過去の経験や性格が、そうできない原因ではないことはすでに示した。年齢や立場が上がれば課題のクリアが楽になるわけではない。今の自分にとって少し難しいと感じる課題を誰もが抱えているはずだ。例えば、中学生が赤点のテストを隠すのと、企業が粉飾決算するのではことの大きさが違う。しかし基本的恐怖心から逃げ回っていることは変わらない。FT軸の評価は、どちらも同じになるだろう。チェンジ理論は、絶対的な健康度を測るものさしではない。あくまでその状況に対する相対的な健康度である。今より少しでも恐怖心から信頼感へと移行する。それを手伝うのがアクティベーターの役割だ。

150.柔軟性に欠ける治療家がいるだけ

指導者や教育者である私たち自身も、常に課題に対峙しているものと考えて欲しい。特に仕事の課題は、主導権を放棄しないよう注意するべきだ。具体的には、クライアントが変わらないことを彼らのせいにしてはならない。そうしたくなる気持ちがあるのは悪いことではない。しかし、衝動を却下できないなら、クライアントと変わらない。心理療法家、エリクソンはこう述べている。治療に抵抗する患者などいない、柔軟性に欠ける治療家がいるだけである、と。偽できない理論は縮尺の大きな地図に過ぎない。実際に教育の現場を歩けば、整理のつかないことも起きるだろう。これから残り二つの理論を通じて、精神的な健康に関するルールを包括的に伝えていく。大きなルールの内側でいかに柔軟にクライアントを支援するか、それが私たちの課題だ。地図を元に現地を歩き、あらゆる表現を整理できる視点を養ってもらいたい。

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