第三章:ND-11 変化や維持=すり合わせの結果

偽できない理論

これはチェンジ理論の記事です

より番号が若い記事の続きとなります。分からない方はこちらをお読み下さい。

偽できない理論(ND)目次

2019年1月2日

第三章:ND-10 有益な失敗と無益な失敗

2019年1月12日

077.フィードバック”も一人歩きしがち

失敗という言葉の誤解を解くにはフィードバックという概念を抑えておく必要がある。この言葉も一人歩きしがちで、一般的にパフォーマンスに対する意見や指摘という意味で使われる。しかし本来のフィードバックは、それらとは明確に違う。人の変化を論じるのにフィードバック制御の概念は欠かせない。以下、フィードバック制御をFB制御と省略する。FB制御とはサイバネティクスという自然科学の一理論である。機械の自動制御に関する学問として、数学者が提唱したものだ。例えば、アイロンやこたつ、冷蔵庫、エアコン、自動ドア、など。自動制御機能のある機械製品には、かならずFB制御装置が組み込まれている。他にも、航空宇宙産業や社会現象にまで応用される、とても幅広い概念だ。ポイントは、FB制御のシステムが人の生理機能や神経系統などにも適用できる点である。

078.FB制御のポイントは、自動制御にある

まずは、FB制御の仕組みについて簡単に説明しておこう。例えば、エアコンで部屋を冷やす場合を考えてみて欲しい。最初に人の手で理想とする設定温度を入力する必要がある。もちろん、設定が自動化されているものもあるだろう。ただし、設定ありきであるという点は変わらない。次に設定温度を目指し、機械が自動で冷気を放出する。その結果、部屋の温度に変化が生じる。設定温度よりも高いか低いか、どちらかしかない。今度はセンサーで室温と設定温度の温度差を感知する。最後に温度差を埋めるため、冷却装置のオンオフが自動的に切り替わる。まだ温度が高い場合は冷却装置がオンに、低い場合はオフに切り替わるはずだ。この一連の動きがFB制御のシステムである。最大のポイントは変化や維持が自動制御されている点だ。

079.体温の調節もFB制御で管理されている

今度は、人の生理機能のFB制御について見ていく。体温調節や血圧調節の例が分かりやすい。例えば、人の体温は36度台に設定されている。これは、エアコンの設定温度に当たるだろう。ただしエアコンと違い、体温の設定を変えることはできない。36度台をキープするよう、生理機能は自動制御されることになる。例えば、寒い場所に行ったら何が起きるだろう。体温は外気温の影響を受ける。身体が震えるかもしれない。これはシバリングという骨格筋の収縮で熱を発生させる反応だ。反対に、暑い場所へ行けば汗をかくだろう。気化熱を利用し、体内の熱を逃がすのが、汗の役割である。身震いしたり、発汗したり。これらの反応は意識的なものではない。エアコンが冷却装置をオンオフするのと同様に、FB制御で自動制御されている。

080.意識的な行動もFB制御の影響を受ける

では、少しずつFB制御の原則を拡張していく。例えば、寒いときに一枚、服を着るのはどうだろうか。服を着るには筋肉を動かさなくてはならない。それは明らかに意識的な行動である。しかし、そうするか否かの判断は無意識だ。一枚羽織るかどうかで迷う人などいない。どうするべきか、直感的に判断しているはずだ。特に考えずに服を着るのは反応的な行動と言える。それは、寒さに対して身体が震えるのとさほど変わらない。つまり、意識的な行動も、自動制御の延長にあるということだ。他にも、FB制御の延長にある行動はいくらでもある。例えば、歩くという行動も自動制御の結果と言ってよい。人が歩くには、左右の足を交互に出さなくてはならない。その結果、右か左か、いずれかにバランスが崩れる。しかし、身体はいつも平衡になるよう設定されている。バランスの誤差を検出し、身体に修正の指示を出すのが小脳の役割である。健康な大人が歩いていてコケるようなことはあまりない。平衡状態という設定を維持するよう、FB制御が行われているからだ。FB制御の範囲は、完全に無意識的な生理機能だけに留まらない。生理的な反応に対する言動や行動もFB制御の管理下にあると言って良い。

081.変化や維持はすり合わせの結果である

FB制御の原則は、さらに意識的な行動にも当てはまる。例えば、意思疎通の例が分かりやすい。たとえそのつもりがなくても、他人と考えを共有するのが意思疎通の目的である。話し手は、何気なく考えや意見を述べるかもしれない。しかし、一度ですべての意思を共有することは難しいだろう。表情や仕草を確認すれば、どのぐらい伝わったかが分かる。賢明な話し手なら、何が理解できないかを確認するはずだ。設定と現実の誤差を確認し、今度は伝え方を変えるかもしれない。これを何度か繰り返せば、いずれ意思の共有という設定を達成できる。つまり、意思疎通とは、認識の誤差をすり合わせる作業と言い換えても良い。話し下手な人は、話すのが下手なのではない。FB制御の循環を回すのが下手なのだ。そもそも理解の誤差を埋めるという感覚自体が希薄な人も多いだろう。それは例えば、センサー機能が壊れたエアコンで温度を設定するようなものだ。情報を還元せず一方的に考えを放出しても、共有という設定は達成できない。FB制御を参照すれば、あらゆる変化がすり合わせの結果であることが分かる。

082.だからこそ失敗しなければならない

FB制御のポイントをまとめておこう。まず設定ありきであるという点は重要だ。どこに向かうのか、どんな状態を維持するのか。これらがなければ循環が始まらない。次に必要なのはアウトプットである。冷気を放出したり、考えを口にしたり。もちろん、一度でピタリと設定通りになることは期待できない。アウトプットの後はインプットが行われる。温度差を感知したり、理解を確認したり。設定と現実の誤差を求めなくてはならない。そして、その誤差をアウトプットに還元する。冷却装置を止めたり、使う言葉を変えたり。その繰り返しの結果、設定が達成される。注目するべきは、最初のアウトプットが確実に失敗に終わる点だ。たたき台というニュアンスに近いだろう。それをダメなものと解釈すること自体、大きな誤解である。どんなことでも一度で成功することはありえない。他人の目や評価に恐怖心を感じるのなら、なおさら無益な失敗で終わらせてはならない。

第三章:ND-12 コントローラーがつながっていない

2019年1月14日

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