医師が教えない精神医療の黒すぎる事実(完全版②) 抗うつ薬の致命的副作用

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医師が教えない精神医療の黒すぎる事実(簡易版)うつ病流行の裏にある真実

2019年5月25日

医師が教えない精神医療の黒すぎる事実(完全版①)謎の診断マニュアルDSM

2019年6月27日

医師が教えない精神医療の黒すぎる事実(完全版③) 狡猾なうつ病の輸出戦略

2019年6月27日

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神経伝達物質仮説は都市伝説レベル?

DSMがもたらしたのは障害定義の拡大、正常範囲の抑うつや不安は病気となり、人生の悩みや反社会的な行動は治療の対象となった。

とはいえ、正常な範囲であっても悩むのは楽しいことではないし、抑うつや不安が苦しいのも間違いないだろう。それが薬を飲めば治るというのだ。消費者にとって悪いことではない。

ただしそれは薬に効果があれば、の話だ

まずSSRIとは何か?を説明しておきたい。

うつ病や強迫性障害、社交不安障害など抑うつや不安の症状がある場合、たいていの精神科医は第一選択肢として抗うつ薬、SSRIを処方するようだ。SSRIとは選択的セロトニン再取り込み阻害薬の略語であり、第三世代の抗うつ薬と呼ばれ抑うつや不安に効くとされている。

初めて市場に出たSSRIはアストラのツェルミド(ジメリジン)、1972年にヨーロッパで認可され1982年から販売が開始される。数年後にギラン・バレー症候群を引き起こす恐れがあることが分かり、市場から消える。その後、リモキシプライドが発売されるが、再生不良性貧血の恐れがあることが分かり、市場から消える。

結論から言えば、SSRI=リスク>ベネフィット、特に診断インフレで増えた軽症うつ病に対しては百害あって一利なし、危険な薬である。

何より副作用による二次的な被害が甚大だ。

よく知られているSSRIを紹介しておこう。

SSRIに限らず、抗うつ薬がなぜ効果があるのかという話題になると、神経伝達物質の濃度を高めるというモノアミン仮説がよく挙がる。

これがまた何の根拠もないというのだ。

1960年、ジョージ・アシュクロフトは自殺者の脳とうつ病患者の髄液中にセロトニンレベルの低下が見られることを発見した。うつ病や抑うつがセロトニンの枯渇で起きるというモノアミン仮説の先駆けとなった研究の一つである。

その後、多くの研究者によってモノアミン仮説は検証されたが、決定的な証拠がなかなか見つからない。ある研究でまったく因果関係がないことが分かれば、またある研究で部分的に相関性があることが分かるなど、一致しないのだ。

1984年、NIMH(米国立精神衛生研究所)のジェームズ・マースはこう報告している。

脳髄液中のセロトニン代謝物の濃度が、高い患者もいれば、低い患者もいた。

どうやらまったくの的外れだったようだ。

NIMH(米国立精神衛生研究所)は、唯一可能な結論導き出した。セロトニン作動性システムの機能の亢進や低下そのものが、うつ病に関係するとは考えられない。心の病の流行と精神科治療薬の真実(P.111)ロバート・ウィタカー

セロトニン濃度を上げると抑うつが治る、この仮説の間違いを示す決定的な事実がある。

ヨーロッパやインドではスタブロンが抑うつや不安の治療で一般的に使われていてジェネリック薬も出ている。スタブロンはSSRE、選択的セロトニン再取り込み促進薬である。SSRIがセロトニンの再取り込みを阻害するのに対し、SSREはその真逆、再取り込みを、促進する。

逆の作用があればセロトニン濃度が下がるはずだ。なぜ抑うつ効果があるのか誰も知らない。

ジャーナリストのイーサン・ウォッターズはモノアミン仮説について、こう表現している。

モノアミン仮説は科学的根拠のない、文化的に共有されている物語だ。出典:クレイジー・ライク・アメリカ イーサン・ウォッターズ

何の根拠もない仮説が一人歩きし、エビデンスのある正当なものであるかのように誤解されているのだ。DSMのエビデンス同様、メディアや大衆の誤解が引き起こした都市伝説である。

モノアミン仮説ほか、精神障害が神経伝達物質の異常によって起きるという仮説がなぜ一人歩きをしたのか、詳細はこちらの記事で論じる。

うつ病や統合失調症の神経伝達物質仮説の半世紀後にわかった致命的な間違い

2019年6月13日

モノアミン仮説の誤解は、メラビアンの法則が一人歩きしてしまった現象とよく似ている。

メラビアンの法則とは、矛盾したメッセージが発せられたときの人の受けとめ方について、人の行動が他人にどのように影響を及ぼすかを判断するアルバート・メラビアンが行った実験についての俗流解釈である。出典:Wikipedia

メラビアンの法則は俗説化し、書籍や研修などで、人は見た目が9割、のような極端な結論を示す際の根拠として誤用されてきた。要するに、商業利用によって拡散されたデマである。

(メラビアンの研究は素晴らしいものである)

モノアミン仮説は、セロトニン濃度を高める薬を広告する上で、製薬企業にとって都合のよい説だった。精神医療にとっても擬似医学の汚名やコンプレックスを消し去ることができる。

患者にとっても抑うつや不安が性格ではなく、化学物質のせいだという説明は魅力的だ。利害関係者全員の利益が一致するため、デマが一人歩きしたことも理解できない話ではない。

問題は、いまだモノアミン仮説がデマであることを知らない精神医療従事者もいることだ。

過度のストレスや心身の疲労などで、神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンが減少して十分に機能しなくなると、感情のコントロールができず、憂うつ感や無気力などを引き起こすといわれています。出典:うつ病ネット

厚生労働省はうまく距離を取っているようだ。

セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内の神経伝達物質の働きが悪くなっていると推測されています。しかし、これもセロトニンやノルアドレナリンに作用する薬がうつ状態に効くことがあるため、考えられていることであり、まだ十分に実証されているとはいえません。出典:みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)

結局、なぜSSRIに抗うつ効果があるのか誰も分かっていない。それでも効果があるならいいじゃないか、という意見もあるだろう。SSRIに効果が見られたのは発売初期だけだった。

あまりにも不確かすぎるSSRIの効果

当初、SSRIは画期的な薬だと紹介された。

プロザック服用は数百万人、合法的なドラッグカルチャーの登場。出典:ニューヨーク・タイムズ

プロザックは、社会的、生産的な活動に自由に没頭できるようにすることによって、喜びをもたらすからである。マリファナ、LSD、さらには、アルコールとも異なり、プロザックにはそれ自体が快楽の源泉ではないし、知的ゆがみも引き起こさない。プロザックは、喜びを喪失した人々に、〈正常な〉人々が享受しているような喜びの感情への道を開いてやるだけである。出典:驚異の脳内薬品 ピーター・クレイマー

ところが発売後しばらく経つと、本当に効果があるのか?と、疑問を持つ研究者が現れる。

NIMH、アメリカ国立精神衛生研究所の資金提供によって2006年に実施されたうつ病の大規模臨床試験、STAR・Dの研究結果によると、SSRIをうつ病患者に与えたとしても、うつ病の反応率(投薬で症状の重さが治療開始時の半分以下になった人)の割合は50%に留まる。寛解率、(投薬でほぼ正常な状態に戻った人の割合)にいたっては、わずか30%に過ぎない。

要約すると、そこそこよくなった人の割合が5割、完全によくなった人の割合が3割となる。

効果があるとみなすには少し頼りない数字だ。

軽症うつ病やうつ状態に対して抗うつ薬とプラセボの有意差(偶然や誤差によって生じるものではない差)が見られないとする研究もある。

プラセボ(偽薬)というのは何かというと、

プラセボは本物の薬とそっくりに見えるよう作られていますが、デンプンや糖のような不活性成分でできています。現在では、研究を目的とする試験に限って使用されます( 科学としての医学)。プラセボには薬効成分は入っていませんが、服用した人の中には、状態が良くなる人もいます。なかには、「副作用」が出る人もいます。この現象をプラセボ効果といいます。出典:MSDマニュアル 家庭版

SSRIを服用した10人のうち5人が改善、プラセボを飲んだ10人のうち4人が改善した。SSRIとプラセボの間に有意差は見られない。

ならば、副作用がある分、抗うつ薬を服用するメリットがないことになる。しかし、別の視点から見れば、副作用にも意味はあるようだ。

コネティカット大学の心理学者アービング・カーシュらは、プラセボにも本物の抗うつ薬の約75%の効果があると発表、さらに「25%の差は、副作用を感じると本物だと分かり、被験者の期待感が高まるからだ」と説明した。

もしカーシュの主張が真実ならば、本物の薬に効果があることもプラセボ効果ということになる。だとしたら、それはもはや薬ではない。

実際、アメリカの食品や薬品の許認可を管轄するFDA(Food and Drug Administration)でも抗うつ薬の効果について疑問視されている。

FDAのポール・リーバーは過去に行われた抗うつ薬の臨床試験を遡り、古い抗うつ薬も新しい抗うつ薬も効果が変わらないことを指摘する。実質的にプラセボ対照試験をクリアできない抗うつ薬は認可しない、という意味であった。

例えば、ゾロフトの認可申請で五つの臨床試験のうちプラセボとの有意差を示せたのは二つ、抗うつ薬がプラセボとの差を示せないまま市場に出ている問題について、英国、バンガー大学のデイヴィッド・ヒーリーはこう指摘する。

単なる偶然によって統計的に有意な結果が出るまで、何度も試験を繰り返せばよいのだ。

これはかなり重要な指摘ではないだろうか。

DSMが入口、病気と診断される際の見誤りを引き起こすとすれば、SSRIは出口、病気から回復する際の見誤りを引き起こしている。

抑うつや不安からの回復を促進する、または阻害する要素は薬の効果以外にもあったはずだ。

例えば、夫が珍しく愚痴を聞いてくれたことや子どもの成績がいつもより悪かったこと、凶悪事件のニュースを聞いて不安になるとか、書店で立ち読みした哲学書に影響を受けたなど、

仮にSSRIに効果があったとしても、回復の要因すべてを薬効に還元するのはおかしい。あまりにも不確定要素が多すぎて効果を正しく評価できていない、というのが現実なのだろう。

FDAの試験をクリアするのに薬そのものの効果というのは関係ないようだ。何度も試験を繰り返し、偶然の重なりによってFDAが定めた規定をクリアできれば、薬は認可されてしまう。

効果が不確かなのも当たり前、と言える。

それでもSSRIが百害あって一利なしというのは少し言い過ぎに聞こえるかもしれない。一般的に薬の有効性はリスクとベネフィットで評価される。SSRIに関する問題の本質は、ベネフィットがプラセボと大差ないことではない。

リスクがあまりにも大きすぎることである。

効果はないのに副作用はある奇妙な薬

リスクというのは、つまり副作用のことだ。

SSRIは副作用が少なく、安全性の高い薬だと紹介される。しかしそれは、三環系抗うつ薬などの古いタイプの薬に比べれば、という条件つきの安全性だ。内科医の山田博規は著書で「安全性が高いとは言えない」と述べている。

SSRI、パキシルの添付文書を確認するとうつ病、うつ状態、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害の患者を対象とした国内の臨床試験(承認時)で1424の症例中970例で副作用が報告されている。割合は68.5%、SNRI、サインバルタにいたっては90.2%である。同様の調査における抗生物質の一つ、プロモックスの場合は、副作用の発生率が3.46%に過ぎない。

これは医学の問題というよりも国語の問題だ。より安全な、副作用の少ないなどの形容表現は何と比べて?という比較対象を必要とする。

しかし、多くの場合、比較対象は削除される。

SSRIが三環系抗うつ薬より安全なのは確かだとしても、絶対的な意味で副作用が少ない、と表現するのは明らかに誇張、言い過ぎである。

まず消化器への副作用は以下のようなものだ。

吐き気、嘔吐、便秘、下痢、食欲不振、口渇などの症状があらわれる場合がある。上記の症状は服用初期にあらわれることが多いが2〜3週間前後で軽減、消失する傾向にあるとされる。出典:日経メディカル処方薬辞典

もちろん、精神的な副作用も少なくない。パロキセチン(パキシル)添付文書から引用する。

(3)不安、焦燥、興奮、パニック発作、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア/精神運動不穏、軽躁、躁病等があらわれることが報告されている。出典:パロキセチン(パキシル)添付は文書

抗うつ薬の注意すべき副作用にアクティベーション(賦活性症状)と呼ばれるものがある。アクティベーションとは、抗うつ薬の服用によってイライラや不安が強まったり、衝動が高まったり、眠れなくなったりする症状全般を指す。

アクティベーションの事例を紹介しよう。

50歳代女性、パキシル錠開始後に眠気、食欲不振、不安症状が発現。パニック障害疑いにてパキシル10mg開始。開始3日後に眠気、食欲不振、頭がザワザワするような不安症状あり。中止後、すぐにいずれの症状も回復した。出典:民医連

筆者の経験上、アクティベーションは、ざわざわ、むしゃくしゃ、居ても立っても居られないなど落ち着きのなさを表現することが多い。

自傷他害や自殺未遂など、文字通り致命的で危険な行為を誘発するリスクもあるという。

しかし、抗うつ薬(SSRI)がactivationを引き起こすのは当然だろう。1950年代に開発された抗うつ薬、イソラニアジドやイミプラミンの当初の名称は精神賦活(activat ion)薬である。

つまり、そもそも抗うつ薬の基本理念は精神活動の活性化、activationにあるということだ。

パロキセチン(パキシル)の添付文書によると、

また、因果関係は明らかではないが、これらの症状・行動を来した症例において基礎疾患の悪化、または自殺念慮、自殺企図、他害行為か報告されている。出典:パロキセチン(パキシル)添付文書

文中の基礎疾患が何を指し示すのか定かではないが、これがうつ病のような治療対象の病気のことを指しているならば、抗うつ薬で抑うつが悪化する可能性がある、ということになる。

筆者の経験上、年単位で長期間、抗うつ薬を服用しているが一向に症状が治らないというケースは少なくない。これと言った理由もないのにイライラする、耐えがたいほど強烈な不安に襲われることがあるという訴えはあるあるだ。

恐ろしいのはそれらが元からある症状なのか、SSRIの副作用によるものなのか、もう誰にも判断できないということだ。そしてSSRIの副作用には文字通り、致命的なものもある。

人を狂気に駆り立てる自殺薬SSRI

日本の自殺者数は、3万人を超えるピーク時(1998年から2011年まで)と比較し、2018年は20,840人と減少傾向にあるものの、諸外国と比べて依然として高い割合のままである。

日本における自殺の原因・動機でもっとも多いものは健康問題であるという。具体的には、

健康問題を原因・動機とする自殺者数の内訳としては、病気の悩み・影響(うつ病)がもっとも多く、病気の悩み(身体の病気)がこれに次ぎ、平成27年においては両者で健康問題全体の約4分の3を占めている。出典:自殺の状況をめぐる分析(厚生労働省 )

うつ病と自殺の因果関係は疑う余地もない。しかし、自殺を誘発しているのが抗うつ薬、SSRIであることはあまり知られていない。

ロンドンの作家、カティンカ・ニューマンはSSRIを服用後、子どもを殺してしまったという妄想に取り憑かれ、自身の腕をナイフで切りつけた。ニューマンは自身と同様の体験をした人の証言をTHE PILL THAT STEALS LIVES、人生を奪う薬、という書籍にまとめている。

SSRIに対するニューマンの例えは痛烈だ。

世界的大量殺人(world mass killings)

残念ながら、SSRIが販売された当初、こうも致命的な副作用があることは知られていなかった。SSRIの添付文書に自殺念慮や自殺企図のリスクがあることが記載されたのは2000年代に入ってから、日本は2009年からである。

それ以前の添付文書は、自殺関連行動に関するリスクの記載がなかったそうだ。もちろん、医師がそれを説明することもなかっただろう。

しかし2019年時点の添付文書を確認すると、一枚目の左上、もっとも目立つ箇所に大きな赤字でデカデカとこのように書かれている。

海外で実施した 7 ~18歳の大うつ病性障害患者を対象と したプラセボ対照試験において有効性が確認できなかっ たとの報告、また、自殺に関するリスクが増加するとの 報告もあるので、本剤を18歳未満の大うつ病性障害患者 に投与する際には適応を慎重に検討すること。出典:パロキセチン(パキシル)添付文書

要するに子どもに投与しても効果はないし、自殺のリスクがあるため投与は控えた方がよいということだ。アメリカやヨーロッパでSSRIを服用した子どもの自殺が多数起きたようだ。

例えば、こういうケースである。

13歳のマシュー・ミラーはゾロフトを服用して一週間後に自宅で首吊り自殺、直前に会った友人に対し、家を焼き払うつもりだと打ち明けていた。ミラーの祖母は、落ち着きがなくいてもたってもいられない風だったと述べている。

分かりやすいアクティベーション症状である。

特にアメリカで衝動的な自殺が相次いだため、SSRIの副作用に関する研究が多数行われた。

米食品医薬品局は約10万人の治験データを調査した結果、SSRI服用による25歳未満の自殺リスクは1.5倍、18歳〜24歳で自殺念慮、企図の確率が2.3倍になるという内容を報告した。

ゾロフトを服用していた44人の子どものうち4人が自殺行動を起こした件についてファイザーのウィリマ・ハリソンは「薬のせいではない」と証言、臨床試験監督者たちは「ゾロフトの賦活性作用が原因」という意見で一致している。

当然、子ども限定のリスクではない。パキシルの添付文書の重要な基本的注意を引用する。

若年成人(特に大うつ病性障害患者)において、本剤投与中に自殺行動(自殺既遂・自殺企図)のリスクが高くなる可能性が報告されているため、これらの患者に投与する場合には注意深く観察すること。出典:パロキセチン(パキシル)添付文書

自殺念慮や自殺企図のリスクがあることは、大人でも子どもでも、年齢は関係ないらしい。

ハーバードのタイチャー、グロード、コールは米国精神医学誌で「プロザックを服用する6人の症例について、彼らが脅迫的な自殺念慮に取り憑かれたのはプロザックが原因」と記した。

デイビッド・ヒーリーは、ファイザー社の臨床試験データ、8,000人分を調査した結果から、「SSRI、ゾロフトを服用している患者はプラセボ群と比較して二倍近く、自殺関連行動を起こす率が高い」という結論を出している。

英国で薬の監視を行う医薬品安全性研究ユニットの調査によると、プロザック、ゾロフト、パキシル、ルボックスの服用者50,150人のうち自殺行動を起こした患者数は110人であった。

110人/50,150人なら大したことはない?

もしそう思ったとしたら、それは研究やビジネスの視点で副作用を考えているからだろう。

例えば、あなたの配偶者や子ども、親、友人、同僚、親戚、隣人がもし自殺したら、あなたの気持ちはどのような影響を受けるだろうか。

当然、強烈な悲しみにとらわれるはずだ。

関係が近ければ近いほど、その悲しみはとてつもなく大きく耐えがたいものになるだろう。

研究の視点から見れば、一人の自殺は1という数字でしかない。しかし遺族からすれば、一人の死は生涯消えることのない傷をもたらす。うつ病や不安障害と診断される人もいただろう。

なかにはSSRIを服用した人もいたはずだ。

冷静に考えれば誰でも分かる。近しい人が自殺すれば当然、たとえ死に至らずともそれを計画するとか、言葉にするのを見聞きし、穏やかな気持ちで過ごせる人などいるのだろうか?

SSRIの被害で本当に恐れるべきなのは、服用者自身への副作用に留まらず、その影響が周囲にいる多数の関係者に波及することである。

残念ながらそういった二次的被害に関する研究や報告を見つけることができなかった。おそらく精神医療の興味の範囲にないからだろう。しかし日常生活において配偶者や家族、同僚、友人との関係は誰にとっても悩みの種である。

おそらくSSRIがもたらすもっとも驚異的なリスクは、致命的な副作用である敵意や攻撃性の直接的被害、さらにそれらに遭遇したり、報道で目にすることによる間接的な被害だろう。

それによって起きるのは社会秩序の崩壊だ。

増える凶悪事件とSSRIの密接な関係

もう十分ショックな内容だったかと思うが、ここから先はさらに衝撃的な内容が増える。気分が悪ければ、いますぐ離脱してもらいたい。

SSRIの副作用を再度、確認しておこう。

(3)不安、焦燥、興奮、パニック発作、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア/精神運動不穏、軽躁、躁病等があらわれることが報告されている。出典:パロキセチン(パキシル)添付文書

これらのうち敵意、攻撃性、衝動性が影響したと思われるのが、こういうケースである。

1989年9月、アメリカケンタッキー州でジョセフ・ウェスベッカーが休職中だった職場に乱入し、ライフル銃を乱射。8人を射殺し、12人に重傷を負わせ、自殺する。ウェズベッカーは事件の前年からプロザックを服用していた。

プロザックの発売から二年後の事件だった。SSRIの服用者による凶悪事件は止まらない。

1999年4月20日、アメリカのコロラド州のコロンバイン高等学校で、生徒であるエリック・ハリスとディラン・クレボルドが銃を乱射し、生徒12名、教員1名を射殺、24人に重軽傷を負わせ、自殺する。検死の結果、主犯のエリックの体内から大量のルボックスが検出された。

エリックは事件前年の1998年4月から一年、合計10回、ルボックスを処方され、事件の3ヶ月ほど前から服用量が増加していたという。

SSRI服用者による凶悪事件の例は少なくない。特に上記のコロンバイン高校銃撃事件やバージニア工科大学銃撃事件のようなスクール・シューティングの例を挙げればキリがない。

スクールシューティングとは、教育機関において起こる銃犯罪であり、特に教育機関の関係者がスプリー・キリングや大量虐殺を行う場合に当てはまる。出典:Wikipedia

もちろん、海外だけではない。日本でもSSRIの服用者による凶悪事件はたくさんある。

1999年、全日空ハイジャック事件の犯人、西沢裕司は事件の前年からプロザックやパキシル、ルボックスなどSSRIを大量に処方されていた。事件後、二度目の精神鑑定で抗うつ薬の影響があったことが認定、無期懲役となる。(プロザックは個人輸入したものと思われる)

2006年3月、川崎市多摩区にあるマンションの15階から小学三年生の男児を投げ落とし、殺害する事件が起きた。犯人の今井健詞は事件の前年、4ヶ月間に渡り精神科に入院、うつ病の診断名でSSRI(薬剤名不明)を服用していた。

以上は犯人のSSRI服用歴が公表されている事件であり、公にされていないものなら無数にある。日本で言えば、以下が代表例だろう。

SSRI服用者による凶悪事件(日本)

  • 大阪府池田小殺傷事件(2001年)
  • さいたまドンキホーテ放火事件(2004年)
  • 京都塾講師女児殺害事件(2005年)
  • 秋田児童連続殺害事件(2006年)
  • 長久手町立てこもり発砲事件(2007年)
  • 福岡男児殺害事件(2008年)
  • 秋葉原通り魔事件(2008年)

もちろん、報道されたものがすべてとは限らない。SSRI服用者による敵意、攻撃、衝動性の対象となった被害がどの程度あったのか、その実態を知るのは難しいが、公的なデータから推測するに、それが少なくないことは分かる。

薬の副作用に関する情報を取りまとめる医薬品医療機器総合機構の調査によると、1999年以降、SSRI副作用の報告件数は約5,800件、そのうち3,387件がパキシルによるものだった。

パキシルの症例が多いのは処方の割合によるところが大きい。2008年、処方されたSSRI全体のうちパキシルが占める割合は46.7%だった。

2004年以降で敵意や攻撃による他害行為、その恐れがあった症例は合わせて72件、そのうち殺害や窃盗、DV、自殺、異常行動など自他に実害を与えたケースが18件あったという。

My News Japan(有料情報サイト)で、投稿者の佐々木奎一氏はその18件を公開している。

私は残り54件も確認したが、被害に遭った人、それを見聞きした人にとって、簡単に忘れられるような軽いものでは決してなかった。

さすがの厚生労働省も重い腰をあげたようだ。

厚労省では,SSRI 等の「敵意 / 攻 撃性」に該当する合計 268件の副作 用報告のうち,実際に傷害等の他害 行為があった合計 35 件の因果関係 を精査し、パロキセチンとフルボキサミンで因果関係が否定できないと評価した。出典:パロキセチン(パキシル)と敵意、攻撃性、暴力、犯罪(浜六郎)

因果関係が否定できない=因果関係がある?

というのは言い過ぎだとしても、そのリスクが高い薬であることは間違いないだろう。リスクに見合う十分なベネフィット、効果があるならまだしも、それさえも不確か、というのだ。

SSRIによって近しい人を亡くしたり、近しい人から敵意を向けられたり、衝動的な攻撃を受けたりした人がどのぐらいいたのだろう。それを見聞きして驚いたり、衝撃を受けたり、恐怖心や不安感を覚えた人は何人いるのだろうか。

米フロリダ州パークランで銃乱射事件が起きた高校の生徒2人が相次いで自殺したのに続き、今度は2012年にコネチカット州で起きた小学校銃乱射事件の犠牲者の父親が自殺したとみられることが当局の発表により明らかになった。出典:AFP bBNEWS

副作用の二次的被害によって刻まれた精神的な傷がどのぐらいあったのか、測りようがない。

リスク>ベネフィット、知らなかったとは言え危険な薬を流通させたことについて、精神医療や製薬企業はどう思っているのだろうか?

杏林大学名誉教授、田島治はかなりハッキリと、医原病という言葉を使って警鐘を鳴らす。

現在はSSRIのリスクは臨床医の間でも広く知られているが、かつては薬の必要性が乏しい軽度の患者にも安易に投与された。その一部は今も薬をやめられず苦しんでいる。これは医原病と呼ばざるを得ない。

医原病とは、医療行為によって生じる症状や障害、病気などのことを言う。薬の副作用や手術ミスによる健康被害が代表的なものだろう。

一方、パキシルのメーカー、グラクソスミスクライン(GSK)は、うつ病啓発活動について、

より多くの患者が適切な治療にアクセスすることが可能となり、患者数増加の要因のひとつにもなった。大変意義のあるものだった。

その捉え方にもかなりの温度差があるようだ。

しかし考えてみればそれも当然のことである。SSRIは製薬企業の稼ぎ頭であり、それを自ら貶めるようなコメントを残すはずがない。

製薬産業はボランティアではない。彼らは企業努力をしたのだ。ただし、その努力は明らかに度を超えており、しかも違法なものだった。

隠蔽、買収、やりたい放題の製薬企業

製薬企業は、SSRIに自殺念慮や自殺企図など自殺関連行動を誘発するリスクがあることを前もって知っていた。もちろん、それは法的にも倫理的にも、決して許されることではない。

SSRI被害に関する訴訟が続々と起こされた。

1990年時点で、イーライリリーのSSRI、プロザックに関する訴訟事件はすでに54件、その後も訴訟は増え、1990年代半ばで係争中の160件が併合、広域係属訴訟となっていた。

イーライリリーはプロザックに致命的なリスクがあることをハッキリと認識していたようだ。その証拠として提出されたのが、イーライリリーの社内から見つかった一枚のメモである。

フルオキセチン投与下での自殺行動の発生率は対象薬イミプラミン投与下の5.6倍です。

メモの日付は1985年3月29日、プロザックが発売されたのはその2年後、1987年である。

これは企業努力とは言わない、隠ぺいだ。

パキシルのメーカー、グラクソスミスクライン(GSK)の企業努力などさらに狡猾である。

2012年、アメリカの裁判においてGSKが同社のSSRI、パキシルに関する副作用のリスクを隠ぺいし、虚偽のデータによってうつ病治療への有効性をPRしたことが明らかになった。

その証拠として以下のメモが提出されている。

パキシルの評判を傷つけることになるので効果が示されなかったという記述を含めるのは承認できない。

パキシルとプラセボの間で有意差は認められず、あまり強固ではない。

商業的ダメージになりそうな火種を最小限に抑えるべくデータの流出を管理するべきだ。

大した効果が見られず、それがプラセボと変わらないこと、さらに致命的なリスクがあることを知っていながら発売に踏み切ったようだ。

その後の販売促進活動も実にえげつない。

GSKはあるラジオ番組の中で医師と偽の患者にパキシルの有効性について話させたという。医師が受け取った謝礼は27.5万ドルだった。

要するに、サクラを使ったやらせである。

当時(1997年)の円相場が125円前後、日本円で言えば約3,400万円、かなり高額な報酬だ。しかしパキシルの売上金額からすれば、この報酬が微々たる経費でしかないことが分かる。

隠ぺいによって認可されたパキシルの売上は、1997年以降の9年間で約116億ドル、1997年の相場で言えば、1兆4,500億円にもなる。

もちろん、こうまで大規模な不正が明らかになった以上、経済的な制裁は避けられない。

GSKはパキシルほか複数の薬に関する不正を認め、30億ドル、約2400億円の和解金支払いに合意、これは2009年、ファイザーが支払った23億ドルを超え、過去最高金額である。

2,400億円、とてつもない罰金額だが、これはパキシルが稼いだ金額の16.6%に過ぎない。それに、いくら経済的な制裁を加えたところで、一度失われた命が戻ってくるわけではない。

パキシルによって少なくとも450人が自殺し、600件の出産障害が起きたと報告されている。(取り上げていないが出産異常の症例もある)

プロザックとパキシルの副作用について、妊娠第一期に服用した場合、出生異常のリスクが高まることが大規模調査で明らかにされた。出典:イギリス医学雑誌BMJ

まさしく”world mass killings”である。

もちろん、こんなことが許されるはずもない。

しかし残念ながら、製薬産業においてこの手の企業努力は、しばしば行われているようだ。

2004年から2012年の8年間で、製薬企業が不当に薬を販売したことに対する訴訟はイーライリリー、GSK、ファイザー、アストラルゼネカ、ノバルティスファーマ、ジョンソンアンドジョンソンなど計13件あった。うち11件が1億ドル以上の罰金(和解金)を支払っている。

製薬企業にとって罰金や和解金というのは、どうも販売管理費の位置づけにあるようだ。

ニューイングランド医学雑誌前編集長、マーシャ・エンジェルの指摘はとても分かりやすい。

昔は、製薬会社は病気の治療をするために薬を開発していた。今は、その反対が見られることも少なくない。すなわち、薬に合わせて都合よく病気を作り出しているのである。出典:マーシャ・エンジェル ビッグ・ファーマ(P.111)

これは的を射た皮肉である。例えば、DSM-5に月経前不快気分障害という診断名がある。(もちろん便宜上の定義であり、疾患ではない)

月経前不快気分障害(PMDD)とは、月経が始まる数日前から不快な気分になり、月経の前後や直後に不快感が回復する障害、だという。

PMDDの治療薬として処方されるのがサラフェムという薬だ。このサラフェムの成分はフルオキセチン、なんとあのプロザックである。

プロザックをサラフェムと名前を変え、ピンクと薄紫で着色し、月経前症候群の重症型である月経前不快気分障害に対する適応でFDAから市販承認を取ったのである。マーシャ・エンジェル ビッグ・ファーマ(P.108)

プロザックの特許は2001年に切れている。手元にある資源を再利用して稼ぐには、新しく市場とターゲットを確立する以外に道はない。

新しい市場が月経前症候群、具体的なターゲットとして提案されたのが月経前不快気分障害という診断名とその患者だっだということだ。

それと同様に過去、SSRIは対象となる診断名と患者、つまり、市場とターゲットを拡大してきた。当初、GSKのパキシルが日本で承認されたのはうつ病とパニック障害のみだった。

パキシルの承認取得年(日本)

  • うつ病・抑うつ(2000年)
  • パニック障害(2000年)
  • 強迫性障害(2006年)
  • 社会不安障害(2009年)
  • 外傷後ストレス障害(2013年)

これでようやく話がつながってきた。

製薬業界のビジネスモデルは、軽い症状の人々にも病気だと思い込ませることで市場を拡大してきており、とりわけ生物学的な検査が存在しない精神医学はこの病気の境界の操作に弱く、60年も既存の化合物をわずかに修正し特許を取り直した効果の変わらない薬の販売を拡大してきた。出典:正常を救え アレン・フランセス

日本はSSRI販売戦略の標的にされたようだ。

倫理観が崩壊した製薬企業の販売戦略

前述した通り、DSMが日本の精神障害バブルを引き起こしたのは間違いない。科学的な根拠のない診断基準が使われているのも、診断の除外規定が撤廃されたのも、おかしな診断名が増え続けているのも、おそらく複数の製薬企業によるマーケティングの影響だったのだろう。

モノアミン仮説も見事ダシにされたわけだ。

欧米の精神医学の動向に詳しい精神科医によると、「製薬企業の役員はDSMを出版するアメリカ精神医学会に天下りしている」という。不確かなことを事実と喧伝することはできないが、だとすれば、確かに辻褄は合ってくる。

あくまでも事実に言及するとして、イーライリリーが公開した寄付金の情報を見てみよう。

(2007年) 1-3月の4半期は1180万ドル(約14億円)が提供されたが、この内訳をみると90%は医師生涯教育プログラム(CME)に提供されている。 出典:薬害オンブズパースン会議

3ヶ月で14億円の寄付とは気前がよい。実際は医師に対する教育、啓発が行われていたようだ。寄付金は以下のような団体に流れている。

  • 全米精神疾患同盟(54.45万ドル)
  • 米国医学会うつ病関連サイト(24.9万ドル)

医師の生涯教育と称し、新しい診断名を啓発したり、治療薬の提案をしていたのだろうか?

1985年にアメリカ精神医学会のフレッドゴットリーブは、アメリカ精神医学会は毎年「製薬会社から百万ドル単位の金」を受け取っていると言った。出典:心の病の流行と精神科治療薬の真実(P.412)ロバート・ウィタカー

1985年と言うとプロザックが発売される少し前である。それ以前から製薬企業はアメリカ精神医学会に資金援助をしていたということだ。

製薬企業による情報提供や教育の弊害についてマーシャ・エンジェルはこう指摘している。

教育講演が製薬企業の資金でまかなわれるとき医師は講演を聞いた後でスポンサー会社の薬を多く処方するようになることが分かっている。

しかし、そんなにうまくいくものだろうか?

これは筆者の主観だが、マーケティング担当者が商品を売ることに執着するのと同じように、研究者というのは真実や事実を突き止めることに執着する、その傾向があると私は感じる。

いくら狡猾なマーケティングに巻き込まれたとしても、(医師はともかく)真実や事実の探求に人生を掛ける研究者が、隠ぺいのような分かりやすい不正行為を見過ごすとは考えづらい。

しかしこの疑問は、ヒーリーの衝撃的な告発によって一掃される。SSRIの有効性に関する研究論文の多くが、製薬企業の息がかかったゴーストライターによるものだったというのだ。

ヒーリーによると、1950年代、製薬企業は大学の研究者のために科学論文の代筆を始めたという。それらは当初、何の信用も影響力もない無名学術誌に掲載されていたが、1970年代になると、一流学術誌の大半が製薬企業の代筆による論文で占められるようになったという。

1960年代と言えば、抗精神病薬のソラジンや抗不安薬のミルタウン、リブリウムなど、画期的な向精神薬がいくつも誕生した時代である。(いずれも副作用が問題となりすぐに消えたが)

製薬企業によって代筆された論文がすべてデマとは言わない。しかし、製薬企業の利益になるようバイアスが生じやすいのも確かである。

薬や医療機器の臨床研究においてその製造メーカーがスポンサーになっていると、他のスポンサーによる臨床研究に比べて、その製品に有利になる結果が出やすいことが報告されている。出典:独立行政法人経済産業研究所

たとえ代筆でなくても、製薬企業がスポンサーとなって行われる研究は少なくない。その際、起きやすいのが公表バイアスだろう。つまりスポンサーである製薬企業にとって不都合な研究結果を公表しない、というバイアスである。

GSKをはじめとする製薬企業は科学的知識を創作しコントロールしている。製薬会社のマーケティング部門にとって望ましくない、矛盾したデータが明るみになる可能性はまずないだろう。デイビッド・ヒーリー

FDAに登録された抗うつ薬の臨床試験、74本を対象に行われた追加検証によると、肯定的な結果が得られた試験が38本中、37本が公表されたのに対し、否定的な結果が得られた36本のうち公表されたのは3本のみ。74本すべての臨床試験を再検討した結果、宣伝されているような画期的な効果がないことが分かった。

公表された臨床研究の多くがまるで信用ならない上に医師や医学的ガイドラインに頼ることもできない。ゴーストライターによる医学論文、製薬会社から研究者へのリベートは、SSRI研究において顕著である。マーシャ・エンジェル 月刊誌”The New York Review of Books”

ここまでされたらもうお手上げである。彼らは倫理観をどこかへ置き忘れてきたのだろう。

患者が医療や医師を信頼できるのは証拠に基づく公平な研究が背景にあるからだ。その前提が覆された以上、それらを信じる理由はない。

こういったゆがみは製薬企業にとって恩恵をもたらすが、患者にとっては災厄をもたらす。

不都合な研究結果を公表しないことによって引き起こされる被害は甚大である。公表バイアス、出版バイアスによる健康被害のうち、もっとも大規模なものはサリドマイド被害だろう。

サリドマイドは1950年代、妊婦や小児が安心して飲める安全無害な睡眠薬(胃腸薬)として世界中で販売された。あとになって分かったのは奇形児出生のリスクがあることだ。奇形児として生まれた子どもは日本で309人、死産を含めると被害者は世界で20万人を超えるという。

たった一錠が人生を狂わせることは実際ある。特に精神医療はソラジンやミルタウン、リブリウムといった悪名高い前歴が多数あるのだ。(精神医療の黒すぎる過去は別の記事で論じる)

いずれSSRI被害がサリドマイドを超える薬害と認識される日が来るかもしれない。しかし、サリドマイドと違い、SSRIによる副作用は生物学的、化学的に説明できるものではない。

SSRIに関する重大な問題が日本において公の認識となるのはまだ少し先になるだろう。

BBCのインタビューに対し、精神科医のディビッド・ヒーリーは誠実にこう答えている。

あなたが自殺を考えるほど重いうつ病にかかったなら抗うつ薬を飲むことをお勧めする。しかし、あなたが人生の悩みで一時的に落ち込んだに過ぎないのに抗うつ薬を飲むとすれば、それはあなたの仕事やあなたの家庭、あなたの命をかけることになる。出典:抗うつ薬の功罪

人生を賭けたギャンブルということだ。


以上、SSRIについてまとめると、SSRIがベネフィットの少ないリスキーな薬であることは間違いない。しかし、事の本質はそこではない。(もちろんそれもかなり重要な問題ではあるが)

問題は、抗うつ効果がある(と言われる)薬を売るため、DSMという科学的根拠のない診断基準が巧妙に利用されてしまったことにある。

本記事の冒頭について思い出してもらいたい。

1999年以降、日本において気分障害が激増した背景として三つの出来事を提示した。DSMが導入されたこと、SSRIが発売されたこと、日本の精神障害観が変わったこと、である。

どうやら私はこれら三つの背景の因果関係を見誤っていたようだ。正しくはこうだろう。

最初にあったのは製薬企業によるSSRIのマーケティング戦略である。DSMが導入されたことや奇妙な診断名が増えていることはマーケティング戦略の下位項目、つまり戦術である。

よく練られた戦略と巧妙な戦術は一貫し、ある一つの目的に向かって計画通り、機能した。目的とは、他国の精神障害観を変えることだ。

もちろん、日本もターゲットの一つである。精神科や心療内科の数が倍増したことも、マーケティング戦略のシナリオの一つなのだろう。

SSRIの販売が精神障害バブルを引き起こしたのではない。SSRIを販売するために精神障害パブルが引き起こされたと言うべきである。

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